スズメノロウソク (ヤブカラシの異名)
>その気のついでに、……何となく、そこいら屋敷町の垣根を探して(ごんごんごま)が見たかったのである。この名からして小児(こども)で可(い)い。――私は大好きだ。スズメノエンドウ、スズメウリ、スズメノヒエ、姫百合(ひめゆり)、姫萩(ひめはぎ)、姫紫苑(ひめしおん)、姫菊(ひめぎく)のろうたけた称(となえ)に対して、スズメの名のつく一列の雑草の中に、このごんごんごまを、私はひそかに「スズメの蝋燭(ろうそく)」と称して、内々贔屓(ひいき)でいる。<
泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」より
ヤブカラシの花を、「スズメの蝋燭(ろうそく)」と名づけた鏡花は、ただその一事を持ってしても、天才と呼ばれてしかるべきだと思います。
スズメの蝋燭と言われれば、うなづくほかないです。
ゴンゴンゴマとは、木でできた独楽(こま)で、たぶん、ごんごんぶつけ合って遊ぶんでしょう。ヤブカラシの実を、その独楽に見立てた名前です。
ヤブカラシはありふれた雑草ですが、たいてい3倍体らしく、あまり実はつきません。時には実を見ることもありますよ。
ヤブカラシは、スズメノロウソクとして花開き、ゴンゴンゴマとして実になるのです。