アボカドの種

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伊丹十三監督の映画「お葬式」は、東京の病院に健康診断に行ったおっさんが、帰ってきて、その妻に、「悪いところは特になかったよ」と言って、いきなり倒れる、ところから始まります。
倒れたときに、手にした包みからアボカドが転げて落ちました。アボカドは当時はまだ珍しいもので東京に行かないと買えないようなものでした。映画はその後、そのおっさんの入院、死、お葬式へと進むのですが、私は、アボカドのことを考えていました。
映画を見るしばらく前に父親の葬式に誰かが持ってきた果物かごのアボカドを思い出していたのです。

どうしてこんなに種が大きいんだろう。

その時すでに私は、アボカドを死と関係のある食べ物だと位置づけておりました。

どうしてこんなに種が大きいんだろう。

アボカドはメキシコの果物だという。メキシコの暗い熱帯雨林の植物に違いない。暗い熱帯雨林では、芽を出してからかろうじて日の当るところまで、自分の力で伸びていかなくてはならないだろう。だからこんなに大きな種が必要なのだ。

私が植物の生える環境とその種の大きさについて考えるようになったのは、このときからです。

日当たりのいいところの植物は、種は小さくていいから小さな綿毛でも風に乗って飛んでいく。もう少し大きな種は鳥のお腹の中で飛んでいく。さらに大きな種は、さて、どうしようか。