夕焼け

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「その晩は、他に何も起こらなかったとしても、空がおよそ不思議なぐあいに夕焼けしたことで人々の記憶に残っているはずである。それは世界の終わりを思わせて、空が一面にほとんど手で触れることができる感じがする極彩色の羽の形をした雲でおおわれ、そうして空に広がった羽は、ほとんど人の顔をなでそうだった。その大部分は灰色で、それが淡い紫や濃紫、また、どこか不自然な桃色や緑色をおびていたが、西の方に向かってはなんとも透明に燃え上がっているありさまが言語に絶し、その端のまっ赤に焼けた羽が太陽を人に見せるのには、よすぎるもののように包んでいた。」

(G・K・チェスタトン 「木曜の男」 吉田健一訳、より)